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2017-06

韓国ドラマ「トッケビ」小説 コツコツ翻訳7 コンケビのセリフに萌える♪ - 2017.05.21 Sun



5話です。
上巻の訳もようやく200ページを超えました~(^_-)-☆

この章でぐっとくるセリフはこれでしょね☆まったく憎いったらありゃしない(笑)

그게 필요하면 그것까지 하고. 사랑해
クゲ ピリョハミョン クゴッカジ ハゴ サランヘ

それが必要ならそこまでするし。 愛してる


ウンタクに「おじさん、私のこと愛してるの?」と聞かれて答えたセリフ。
能面のように感情のない表情で放った言葉。
本当は好きなのに、これ以上好きになったら現生に未練が残ると思い
必死に感情を殺しているように見えます。
しかし、セリフがね☆
なんとも憎いわ♡


そしてこの回、面白かったのは名前のない死神が名前をつけたくてウンタクに相談する場面。。
引き合いに出された俳優さん3人のうち、
ヒョンビンは「シークレットガーデン」キム・ウビンは「相続者たち」でキム・ウンスク作家の
ドラマに出演してますからね。ウォンビンはどこかで接点あったのかしら?
いずれにせよお面白い。
あ、次の章ではパク・ボコムも出てきます(笑)

P185
彼の名前 그이 이름 クエ イルム

怒った人のように冷たい顔でウンタクを宿泊ホテルまで送り、家に帰ってきたトッケビは部屋のドアにもたれた。心臓が激しい鼓動を打つかのように痛み始めた。ウンタクが依然として自分に駆け寄ってくるように感じた。ウンタクの歩みが自分の心臓の音のようだった。ドク、ドク、心臓の拍動の音が耳元で鳴った。自分が生きていることが明らかだった。生きることと、生きたいことはあまりにも異なり、生きたいと思う自分を非難するかのように胸が痛んだ。剣にもう一度刺されたかのように。彼は胸をつかみ崩れ落ちた。
息が止まるほどの苦痛を耐え、トッケビはひたすら決心し、また決心した。消えなければならないと。この生を終わらせなければならないと。もっと生きたくなったり、幸せになる前に。






P186
長い食卓にトッケビと死神は特別に並んで座り、ビールを飲んだ。彼らはそれぞれの理由で自分たちの存在が恨めしい奴らだった。
死神は今日やっとサニーにもう一度会うことに成功した。初めての出会いでは涙を流し、二回目の出会いである今日は何も話すことができなかった。サニーが名前を聞いたためだった。死神には名前が無かった。彼はただ神の使い、お使いをする人であるだけだった。彼は「キム差使」であり、彼の同僚もまたその同僚も皆「キム差使」だったと呼ばれた。それは名前ではなかった。死ぬ前に名前は消えた。彼は何も覚えていなかった。名前だけ聞かれたのなら幸いだっただろう。サニーが元気だったかとも聞いたが、生きてもいない自分に安否などあるはずがなかった。
死神は心の中ががらんとしていた。サニーの顔はずっとちらつくのだが、会うのが楽ではなかった。会おうとすれば、いつでも会えるので怖かった。明らかに今日のように何も答えることができなかった。  
そして彼の横に座ったトッケビは死を決心した状態だった。
 「本当に死ぬのか?」
陰鬱な目でビールを一気に飲み干すトッケビに死神が聞いた。トッケビは白く凍りついた死神を見た。早く旅立つことを願うふりをしていた癖に、今は本当に死ぬのかと心配でもするような死神が彼には少し慰めになった。
 「うむ。初雪が降る前に」
その前に剣を抜かなければならない。
決心も、沈黙も重たかった。サニーから逃げ出したように、横に座った彼の死にも、死神ができることといえばただうなずくだけだった。

椅子から立ち上がったトッケビがドアの外に出た。着いた所はウンタクが泊まっていたスイートルームの前だった。ドアを開けて部屋の中に入っていくと、ウンタクが蝋燭に火を付けていた。いくつかの蝋燭の中で、最後の蝋燭に火を付けているところだった。
ドアが開く音に、ウンタクはぎくりとした。冷蔵庫を初め、部屋に備わっていたものを全部空っぽにしたことについて問いただそうとやってきたトックァだと思った。
 「俺を呼び出そうとずいぶん準備したみたいだな」
 「あ、びっくりした!」
 「入るぞ。なんで呼ぼうとしたんだ」
 「おじさん、なんで来たの?トックァさんが話したの?」
P188
全く訳がわからない表情だった。わけもなく気がとがめたウンタクが先にすらすらと状況を説明した。
 「それが・・・実は私怒られたの。トックァさんに」
 「あいつが、誰かを怒るほど潔白なやつではないはずだが」
 「冷蔵庫にあるものを私が全部空にしちゃったの。これ、精算どうすれば・・アルバイトのお給料もらったらきちんと返すから」
試験の準備をしていて亡くなった女の子の鬼神1人がウンタクの横にくっついていた。娘の葬式を終えて母親が考試院(下宿)に荷物を整理しに来て、空っぽの冷蔵庫を見たら悲しむと、冷蔵庫を一杯にしてほしいと言った。その事情を聴いて知らないふりをするのが辛かった。持ち合わせがなく先ずはホテルにある食べ物を持てるだけ運んで考試院の冷蔵庫をいっぱいにした。アルバイトをして、きちんきちんと返すと言ってもトッケビは特に返事がなかった。
 「だめかな・・・?実際、お酒はおじさんが飲んだでしょう?他のは私がちょっと使って。知らないふりをしたらこれ全部吹いて消してしまうからね!今日一日中、行ったり来たりさせることもできるんだから!」
騒々しいウンタクが説明するが、トッケビが静かに手を上げて動かした。動きひとつで蝋燭が一度に消えてしまった。周囲が暗くなって煙が立ち上った。
 「もう召喚するな」
静寂が流れた。彼が怒ったのかと思いウンタクはドキっとした。召喚するなというトッケビの声が低くまた重たかった。彼が恐ろしい存在のように感じた。
 「もう必要ない。いつもそばにいるから。家に行こう」
 「・・・どこの家?」
 「俺が住んでいる家。お前はトッケビの新婦だから」
聞きたかった言葉だった。お前はトッケビ新婦だ。ずっとそばにいる。家に行こう。本当にすべて聞きたかった言葉なのにウンタクは全くいぶかしく思った。家族は作らないといったトッケビが。自分の存在を否定だけした彼が突然このように言うので不安になった。
そのように念願した家、誰かの新婦になって家族ができること、すべてが嬉しかった。彼は?今までウンタクをさんざん押しやってきたトッケビだった。ただ剣を抜きたくてウンタクを新婦として認めるようだった。他の理由が必要なことではなかったが。でも、ウンタクは口の中でもごもごした。 ウンタクのまなざしが風の前で灯のように揺れた。
 「おじさん、私のこと愛してる?」
 「それが必要ならそこまでするし」
抑揚のない話し方は冷たかった。ウンタクは震える視線でトッケビを見上げた。さらに遠く感じた。
 「愛してる」
私を愛してると言っているのに、むしろどの時よりも遠く感じた。
P190
その瞬間、窓の外で雷が鳴った。雷の音が肩身を狭くするほど大きかった。雨が窓を砕くように降り始めた。これほど悲しいのに、愛してるだなんて。ウンタクの心にも雨が降った。暗闇の中の二人が不安に浸っていった。
 「私がそんなに嫌い?」
知りたくなくても聞くしかないように雨が降った。
 「何がそんなに嫌いでこんなに悲しくなれるの?雨がざあざあ降るし。いいわ。おじさんが嫌いでも、悲しくても私はおじさんの家で住むから」
心が傷ついた子を慰めてあげたくてもそうすることができなかった。トッケビはウンタクの言葉をじっと聞いていた。
 「今私は冷たいトッケビ、熱いトッケビ選ぶような贅沢は言ってられないの。いずれにせよ私が剣を抜いてあればいいわけじゃない」
 「そうだ。それでいい」
むっとしたウンタクがこみ上げる感情をこらえぐるりと後ろを向いた。
 「待ってて。荷物をまとめてくるから」
家へ向かう車の窓の外にも雨は依然として降っていた。ウンタクはトッケビがこの雨をいったいいつ止ませようとしているのか聞きたかったがプライドが傷ついて聞く事ができなかった。それでもこのくらい傷ついたらもういいでしょ、どこまで傷つけるつもりなのか。車の中の寂寞感も外の雨音も嫌で、ウンタクは聞いた。
 「おじさん名前はなんていうの?」
運転するトッケビに答えはなかった。
 「すごく気になって聞くわけではないのよ。どんなに私たちが、結婚というよりはちょっと遠くて同棲よりは近い曖昧な関係でも名目は新婦なのに、新郎になるトッケビの名前ぐらいは知っていなくちゃと思って」
剣が見えるというのではなく、だから剣を抜けるということでもなく、少しでもトッケビ新婦として持つことができる特別感が欲しかった。自分を家に連れて行きながら、この雨を降らせるトッケビなので、ウンタクもそこまで特別でありたいと思うわけではないが。それでもただ気持ちが落ち着かなかった。寂しく思わないようにしようと思いながらも寂しかった。
 「私たち、まだ私たちじゃないのね」
でもその小さな特別感も願ってはいけないと言うのなら、どうすることもできない役割だった。ウンタクは諦めた。最初からたくさんのものを持って生まれたわけではなかった。欲しいと思ってもすべて持てるわけではない事もわかった。手に掴むことができるのは元々少なく、諦めるのが上手だった。再び窓の外を見るウンタクふぁが、黙々と運転だけをしていたトッケビがついに口を開いた。
 「お前が生まれる前から始まったと思うんだけど」
信号が赤に変わって車が止まった。トッケビが言葉を続けた。
 「俺たち」
ウンタクは目をしばたいた。一人ではない、「私たち」になりたくて彼を待った。私たちになれたらいいと思ったしウンタクと私たちになって彼が悲しくならなければいいなと思った。
 「いつかなユ・ジョンシン、またいつかはユ・ジェシン、今はユ・シンジェ。本当の名前は。。。」
ウンタクは息を殺し次の言葉を待った。
 「キム・シン」
声を出さずに口の形だけで彼の名前を真似て見た。キム・シン。
信号が変わった。ウンタクがかすかに笑みを浮かべ青信号になったと言った。
車が再び濡れた路面を走り始めた。


トッケビの家にウンタクが住むことになった。その言葉はウンタクが死神と一つ屋根の下で暮らすようになるということだった。大丈夫なのかという死神の下心ある質問にウンタクは灯台下暗しだと、気丈に答えた。トッケビが灯台になってくれればいいじゃないとさらに付け加えた。死神はそんなウンタクが憎らしくはなかった。19年前、そして9年前にも「その他漏落者」を連れていけなかったのは、すべてに意味があったのだと思ったりもした。
P193
急に決まったことなのでウンタクが使う部屋がちゃんと準備されていなかった。部屋をどんな風にしつらえるかトッケビと死神の意見が二つに割れた。ベッドひとつもなく、ウンタクは先ずトッケビの部屋で一晩過ごすことになった。そのおかげでトッケビと同じ部屋で寝ることになった死神の不満は半端なかったが、それでも他の方法があるのか。実質的な家のオーナーは依然トッケビだった。
死神の隣に横になったトッケビは天井を見ながら物思いにふけった。あまりにも長かった人生を終わりにしようとする思いが深くなった。泥沼のようだった。
 「おまえは神に会ったことがあるか?」
白いシーツを頭の先まで引き上げて寝る体勢に入った死神が何も答えないでいると、トッケビがもう一度質問した。
 「もしかして、今、神に会ってるのか?」
ぱっとシーツをまくり、死神が苦々しい表情をした。横で寝ているのも気を使うのに寝る時間まで言葉を掛けるなんて全く気持ちが穏やかではなかった。
 「声を掛けるなといっただろ。俺のような末端が神にどうやって会うんだ」
 「俺は会ったんだけど」
 「どんな顔してた?」
剣の上にとまった蝶。トッケビはかなり遠い昔の記憶を取り出した。
 「ただ・・・蝶だった」
P194
 「いつもそんな風だ。通り過ぎる蝶一匹もむやみに扱えないように。顔だけでも見せてくれたら恨みつらみでも言うのに」
しばらく二人は無言だった。人ではない存在としてこの世に長くとどまることはそれなりにくたびれることだった。トッケビが先に沈黙を破った。
 「神が本当に耐えられるだけの試練を与えるというなら、俺をすごく過大評価しているじゃないかと思う」
 「・・・辛いのか?」
 「心配するな。抱きついて泣いたりしない」
このような状況でも冗談を投げてくるトッケビに死神は呆れて笑った。確かに、笑わなければ泣く事しか残っていなかった。
 「人間たちはそんなによく会う神を、俺たちはなぜ一度も会えない」
死神の恨みのこもった言葉が空中に飛び散った。

トッケビの部屋に入ってきたウンタクはただ不思議そうに部屋の中を見回した。あちこちに彼の痕跡が浸み込んでいた。いつの時代からあるのかわからない古い装飾品があちこちにあって、洋服掛けにかかっている服の中にロングコートも見えた。
 「あ、これ私と初めて会ったときに着てたやつだ」
嬉しい気持ちになった。あの時現れてくれて有難かったのだから。
P195
トッケビの部屋は彼と似ていた。古くて、雅びで、粋なもので満ちていた。ウンタクは本棚の上の本に目を走らせると、机に向かい椅子に座った。机に座るや見慣れた詩集があった。
 「あ、私の本!私が持っていてって言ったんだっけ?」
わけもなくぶつぶつと言った。でも自分があげたものが大切に置いてあるので悪くない気分だった。詩集の横にはノートがあった。見ただけでも重要なノートのようで、用心深く指で1ページめくってみた。それはトッケビが書き記した遺言書であったが、漢字で書かれていたためウンタクには理解できない内容だった。解釈しようとしても知らない漢字が文章ごとにかかっていた。穴が開くように漢字を目に刻み付け、いつか意味を理解したいと思った。ページを何枚がめくると、中間あたりにコーティングされた紅葉の葉が出てきた。
 「捨てなかったんだ。大事に持っていたとは」
少し前までも憎らしいほど寂しかったのだが、いつの間にか心がすっきりしていた。ウンタクはもう一度紅葉をノートの間にはさんでおいた。
朝早く起きようとするなら、早く寝なければならなかった。朝ごはんでも作ろうと思った。家がなく訪ねてきた私のためにトッケビが部屋を空けてくれたのだから、その程度はしなくちゃ。叔母の家で過ごした事とは大きく変わらないだろう。お小遣いも、ご飯も、洗濯も、すべて自分でやって、肩書がトッケビ新婦なのだから、何でもできることがあればすべてやりたかった。
いざ起きてみると料理は二人が自分たちでうまくやって、片づけも皿が空中を飛んでシンク台に入っていき、ウンタクがやることはなかったということだ。

登校する前、ウンタクは朝からバチバチとやり合っているトッケビと死神を呼び集めた。これからのこの家での生活を考え、夜遅くに書いて置いた物があった。
「訴状」(호소문:苦しい立場を訴える文; 要請文.)
耳を傾けていただけたらありがたいというウンタクの言葉に何事かと思った二人。訴状という言葉にさらに面喰った表情になった。
「一、雨があまり降らなければいいと思います。市民たちが迷惑するので、私がこの家に住んでいる間はどうか幸せにしてください」
紙に書いた文字を読みながらウンタクがトッケビを見つめた。彼はウンタクがしようとする話が何なのかを一度で読み取った。トッケビにとって、とてもかわいらしい形の言葉だった。だからさらに不憫な気持ちになった。ウンタクを連れてきながら悲しかったのは、ウンタクのせいであり、ウンタクのせいではなかった。重たい気持ちになった。
 「二、不満があったら口で言ってください。」
今度はウンタクの視線が死神に向かった。死神は指を自分に向けて怪訝な表情をした。
 「私を連れていったとか、連れていくとか、あるいは連れて行こうとするとかが無いと嬉しいです。」
P197
その時になってやっとウンタクの言葉が理解できた。うなずくしかないが。
 「三、急な用事があれば、連絡してください。急に目の前に現れたりしないでください。チ・ウンタク 010-1234-1234.参考までに授業中はだめです。アルバイト中も嫌です。図書館では切ります。以上です」
きっちりその「訴状」というものを読んだウンタクが紙を磁石で冷蔵庫にくっつけた。そのように自分の言うことだけを終えると、行ってきますと挨拶し学校へ消えていった。
トッケビと死神はぽつんと残り、冷蔵庫に貼った紙を見た。誰かと連絡することもできない二人に携帯電話のようなものはあるはずもなかった。携帯がないのを知っていじわるしたのではないか、死神が勝手に推測した。そんな死神がぶつぶつ言うのを聞いたトッケビはその足で携帯電話を買いに行くことを決心した。


昼食の時間に誰かと一緒にご飯を食べ、そうするのは田舎くさいから。ウンタクは努めてそのように考えた。一人食べる昼食は慣れると思うのだが、三々五々集まっておしゃべりをする子たちの間にいる時は、またお昼を一人で食べるのが初めてのように気まずい時があった。ウンタクは早くお弁当を片づけてコンピュータ室に向かった。
まさにお昼真っ盛りの時間なのでコンピュータ室は閑散としている方だった。隅の席に座りインターネットを
開いた。
P198
キム:シン。トッケビが教えてくれた名前を検索に入力した。トッケビになる程の理由があるなら、ものすごい人物であることは明白だった。検索して出ないものはない世の中だから。そして本当に検索結果に何人かの人物が上がった。国会議員 キム・シン、演劇俳優 キム・シンを過ぎると高麗時代 武臣 キム・シンがいた。
 「武臣なら・・・将軍!おお、国の仕事だ、おお、安定してるじゃない」
1082年に生まれ、武臣だった事以外はわかることはなかった。ただ高麗時代に存在する無数の武臣の中の一人だったのだから。ウンタクは頬杖をついてマウスを動かした。存在を知るにもかなり時間がかかった。トッケビであるということと、やっと知るようになった名前ひとつ。それが彼についてウンタクが知っているすべてだった。あ、胸に見ただけでも痛そうな剣が刺さっていることも明らかに知っていた。でももっと知りたかった。もっと知って行きたいと思った。トッケビが幸せだったら嬉しいというのはウンタクの正直な気持ちだった。私ぐらい、いや私以上に寂しく見えるトッケビが幸せだったら嬉しいと心から祈った。

学校を終えて家に戻ってきた時、トッケビはリビングのソファで足を組み余裕があるように座っていた。トッケビはその間、ウンタクの部屋の整理を終えたところだった。ウンタクがダダダっと足音を立てて階段を上がっていった。トッケビは大体生活できるだけのことは準備しておいたと言ったが、ドアを開けてみるとその程度どころではなかった。うわ~という感嘆詞がウンタクの口の外に自然と流れ出た。
壁にかかった時計、よく釣り合った本棚と机、その上に置かれた小さくてかわいいサボテン、壁にかかった絵まで。ウンタクの目を奪わないものはなかった。ウンタクがにやけていた。初めて持った完全な自分だけの部屋だった。幼いころは母と部屋一間の家で過ごした。もちろんその時は自分の部屋が必要でもなかった。叔母の家ではただ部屋の隅っこがウンタクの場所だった。キョンミが使う空間を除いたところがウンタクの空間だった。でもこの広くて快適な部屋がウンタクの部屋だといった。
 「ここは天国なの?これ全部自分でやったの?」
後について入ってきたトッケビに向かってウンタクが聞いた。ウンタクが浮かれてどうしていいかわからないと聞くとトッケビの気分もかなり良くなった。
何でもないことのようにトッケビが肩をすくめた。
 「これは全部自分がやったと思う気持ちで頼んだ」
 「ああ」
すべて準備してくれてもつっけんどんに答えるのがトッケビらしくてウンタクはくすっと笑った。
 「じゃあ、休んで。壁には釘を打つな。下の階は俺の部屋だからかかとを上げて歩くように。」
話しが終わるや否やウンタクはかかとを上げた。わかったと、答えもささやくように言った。とても気分がよかった。
気分がいいのはウンタクだけではなかった。部屋に入ったトッケビはベッドに横になり上の階に上がっていくウンタクの音を聞いた。自分なりに音をさせずに歩くというが、トッケビにはすべて聞こえた。耳をそばだてていたから。トッケビはウンタクが動く音に耳をそばだてて目を閉じた。目を閉じるとさらによく聞こえた。
 「植木鉢を動かしているな。南側に置かなければならないのに」
何がそんなに忙しいのかウンタクはずっと動いていた。
 「ベッドが気に入ったようだな。」
ウンタクがベッドに寝転がってふとんの中に埋まって笑い声を押さえるのも聞こえた。
 「部屋を出たな。」
満足な笑みがトッケビの口元に浮かんだ。照れくさい気分だった。人々の後ろで守護神の役目をしながら感じたこととは違う満足だった。ウンタクは心の底から彼を有難く思っていた。だからトッケビも心の底から喜べた。明るい笑顔が自分を見上げ、トッケビはこの生を終えることにしたこともしばし忘れて心が華やいだ。

問題集を解いているが控えめにドアをノックする音が聞こえた。トン、トン、トン。ウンタクがドアを開け顔をそっと出した。死神がドアの前に立っていた。死神がウンタクを連れていくことは全くないとトッケビが大口をたたいたし、この家に来て以降、思ったよりも死神とうまく過ごしていた。それでもウンタクは依然彼が呼べば少し怖かった。三回ドアを叩くのは、あの世に行くとき死神が三回名前を呼ぶという俗説と関連したことではないか、そんな疑いが頭をもたげた。
ひどく深刻な表情でウンタクを訪ねてきた死神の用事は全くそんな類のものではなかった。名前を付けなければならないのに、まったくどうしていいかわからずウンタクを訪ねてきたのだ。名前が必要だった。女性たちが好む名前。サニーが名前を聞く時、答える名前。名前がなくて、サニーと再び会うことができなかった。携帯電話ができたのに、連絡もできなかった。
 「名前がないんだ。俺が。だからちょっと参考にしようと。女性が好きな男の名前は何かと」
 「おじさんは名前がないの?トッケビのおじさんは名前あるんだけど」
 「・・・何だ」
 「キム・シン。すごくかっこいいでしょ」
ウンタクがにこにこ笑って自慢げに言った。死神は無愛想になった。
 「考えている名前はあるの?」
考えていた名前が何個あるのか、とつとつと名前を羅列する死神を見てウンタクは吹きだした。怖いとだけ思っていたのに、過ごしてみると思ったほどないのは確実だった。女性問題で心の中が騒々しいようだった。どこの死神が女のせいでこんなに悩むのか。すごく笑えるのだが死神はこの世の誰よりも大真面目だった。ウンタクは特別に自分をあの世に連れていかないこの死神を助けてあげることにした。
 「女性が好きな名前と言えば、代表的にこの3つでしょ。ウォンビン、ヒョンビン、キムウビン」
指を広げてみせウンタクが提示した名前はすべて「ビン」の文字がついていた。一生懸命にその名前をつぶやいた死神がついにひとつを選んだ。キム・ウビン。死神の名前はこれでキム・ウビンになった。サニーに紹介する名前ができたのでついにサニーと会いに行くことができた。
P202

受験生というのはこうも忙しくくたびれる業なのかというのをトッケビは改めて悟っていた。夜明けに学校に行き、学校が終わると図書館に行き、さらにはアルバイトまでして夜遅くやっとウンタクは帰宅した。家に戻ってきたウンタクに声を掛けてみようとすると、ドアの前に「勉強中」という立札が見せびらかすように掛かっているのでドアを開けるのも容易ではなかった。
早く剣を抜いて欲しかった。無に戻ることにした一大決心が崩れる前に。同時にすでに決心があいまいになっていた。本当に抜いて欲しかったら、今すぐにでもドアを開けて、すぐ剣を抜いてくれとウンタクを催促することができた。しかしトッケビはウンタクの机の上に、冷蔵庫に、ウンタクが行くところにだけメモを残しておくことで催促の代わりにした。時間ができたら剣をちょっと抜いてくれというメモがウンタクの周りに積まれていった。
ウンタクはメモを発見するたびにくすっと笑った。メモ用紙の上の筆跡は書き殴って書いたように見えてもすごくさっぱりしていた。歳月を感じさせるだけのやや長めの大人の書体だったが、内容はなぜか可愛らしくさえ感じた。早くかっこよくなりたい様子だった。しかしウンタクとしては一日でも遅くしたかった。ただ、そうしたかった。一日でも多くトッケビにとって立派な利用価値がある存在として存在したかった。
1人遅い夕飯を食べ、ウンタクは皿を綺麗に洗い、水気をパッパッと切ってシンク台に上げておいた。タオルで手を拭きながら振り向くと、誰もいなかった食卓にトッケビが座っていて驚いた。一緒に家に住みながらもウンタクが忙しく何日かすれ違うようにだけ見た顔だった。
 「お前夢は何だ、何になりたいんだ?」
驚いた気持ちを落ち着かせているのにトッケビが突拍子もない質問を投げた。ドスが効いたような低い声でとても真剣なふりをしているのでウンタクは面喰った。彼の前に置かれたコーヒーカップから湯気がゆらゆらと上がっていた。
 「こんなにたくさん食べていながら、剣も抜いてくれずに勉強だけするお前の夢は何だと」
 「ラジオPD。修能試験も全部そっちの学科を選らんだんだけど」
 「今その話じゃないだろ!お前、そんなに読解力がなくて大学受かるのか?」
キレまくるトッケビの前にウンタクも向き合って座った。剣を抜いてくれと、このように後を追いかけてくるのでウンタクもこれ以上避けるのは難しかった。
 「そうでなくても私がちょっと深思熟考したんだけど。おじさんをかっこよくするの、しばらく保留にしようと思って」
 「保留?それで本当に深思熟考したのか?」
がばっと立ち上がるように指を指す彼にウンタクは努めて視線を合わさないようにした。
 「私の利用価値がなくなっておじさんが私を追い出したりしたらどうするの!そう思ったらちょっとストレスも受けて勉強に集中できなくなって」
 「勉強もできないのに、おやつはなんできちんきちんと全部食べるんだ!」
 「ほらほら、本性が見えた。もったいないの?だから私が500万ちょうだいって言った時くれれば良かったじゃない」
 「おい、いくらそうでも俺が、肩書が水であり火であり、居たと思えば居なくなる、そんな存在なのに。生の現金をどうやって!はしたない!」
P205
 「ふ~、私が全部、うやうやしく受け取ればいいんでしょ。」
あきれるトッケビが軽口をたたくウンタクを見た。
ウンタクは冗談よりも本心がさらに大きかった。剣を抜いてあげてしまえば、その時はトッケビ新婦でいることが終わるのではないかと思うウンタクは不安だった。早く胸に刺さった醜い剣を抜いて欲しいトッケビを思うと自分が利己的に感じるが、彼がわかってくれたら、と思った。そうでなければ剣を抜いても私に利用価値がると、そんな言葉でも言ってくれたら少し安心できると思った。
 「でもお前はいったい、なんでいつも500なんだ?金額がすごく曖昧だから聞くんだ。ソウルで、賃貸の部屋を一つも借りれない金額なのに」
 「賃貸までは夢にも思ってないし。大人になるまでチムジルバン(韓国の24時間営業しているサウナ)を転々とするお金と、もしかして私が大学に受かったら登録金出さないといけないからそれで200万キープしておいて、学資金は借金して、あれこれ生活費をまかなうのを全部計算した金額だし。その曖昧な500万が私のように貧しい人にとっては5億ぐらい重たいものだし。これでいい?」
こうやって出てきた500万なのか、すらすらと説明するのを聞くとトッケビの気持ちさえも重たくなった。何も聞けなかった。ウンタクの口から出てくる答えはすべてトッケビの胸をヒリヒリさせた。殊勝だと褒めてあげたいと思っても気持ちは重たく、それまでは手で頭をなぜてあげるのが精いっぱいだった。今日はそれさえも辛かった。
P206
しばし口を閉ざしていたトッケビの後で死神が通り過ぎていった。冷蔵庫から飲み物を取り出し死神がつぶやいた。
 「5百(オベク)・・くれ。それをどうしてまだ。冷血漢」
トッケビの耳に後の言葉がひとつも入ってこなかった。5百(オベク)くれ、いつだったかウンタクが「5百」を「告白(コベク)」と聞き間違えたと言って驚いたのを思い出した。本当に「告白」してくれと聞こえるとは。
 「お前、発音をちゃんとしろ、びっくりするじゃないか!」
 「ごひゃく(オ ベク) くれ。と言ったのよ」
 「お前は部屋で勉強しろ」
わけもなくかっかとしているトッケビを後にウンタクがつんとしながら食卓から立ち上がった。
 「5百くれと聞こえたわよ!」
高い音程の声と告白(コベク)という単語がずっとぐるぐる回っていてトッケビは混乱したままだった。


(つづく)


● COMMENT ●

彼の名前 그이 이름

こんにちはSAMTAさん

P191「私たち、まだ私たちじゃないのね」でジ~ン😢と切なくなりました。
韓国語の「ウリ」っていう言葉は日本語の「私達」よりずいぶんと深い意味と結束感があるように感じます。

それと「女性が好きな名前と言えば、代表的にこの3つでしょ。ウォンビン、ヒョンビン、キムウビン」
このセリフはリズム感があって楽しさ倍増ですね(^^♪
 
さてと、早く続き読まなくちゃ・・・

ゆひさん こんばんは~♪
翻訳、進んでますか?

「ウリ」そうですね。「私たち」という意味でありながら、もっと深い、
韓国社会を構成する「核」のような言葉ではないかと思います。
「ウリ オンマ」「ウリ家族」「ウリ民族」「ウリ ナラ(国)」
あ、「ウリ銀行」というのもありますが(^^ゞ

とにかく家族の「ウリ」の輪が広がって国になっているような・・・
「ウリ ナラ」=「韓国」なので、日本人が日本のことを「私たちの国」という意味で
「ウリナラ」と言うのは誤用だ、と教えてもらった時は、ええ~?と驚いた記憶があります^^;;
このあたりは日本とまったく違う文化ですね~

P204の最終行 現金パッチギ (현금 박치기)の意味がちょっと分かりずらかったのですが、
日本語で言う「札束で頬をたたく」や「現金にものを言わせる」みたいな感じなのかと想像してましたが
元々の意味は単に現金決済のことなのでしょうか

ゆひさん
あ~それ、私もわかりませんでした!(^^ゞ
「現金を裸で渡す」というような意味みたいですね。
Naverの辞書は使ってますか?韓国語⇒日本語で調べると
박치기 は「頭突き」という意味と、「船板などの透き間をふさぐ」という二つの意味が出てきますが
韓国語⇒韓国語(국어)で調べてみると、もうひとつ意味がでてきます。
「モノを売り買いする時に現金で交換することを俗っぽく言う」とあるのですが
この意味かと思います。
トッケビ風に言うと
「私は、水であり火であり・・・千年近く生きてきたこの高貴なトッケビ様が
現金を生で渡すような野卑なことをできると思っているのか~イノ~ム!」
みたいな(笑)

SAMTAさん 色々教えて下さりありがとうございました。

Naverの辞書は「어학사전」「 지식백과」もしくはNaverのHPで検索していました。
韓国語⇒韓国語(국어)で調べる方法もあったんですね、大変勉強になりました(^^♪。
현금 박치기の意味もスッキリです。 
うふふ イノ~ムって いかにもトッケビが言いそうですね。

ゆひさん
そうですそうです!NAVER翻訳。普段は日本語への翻訳を選んで調べますが
それでも分からないときは국어国語にして調べてみます。
それでもわからない時は・・・ヘルプを活用します!←韓国語の先生^^;;;

また何かご不明な点ありましたら何なりと~
私でわかる範囲でお答えします♡
あ、今週末はちょっとイベントがありまして
こつこつ翻訳はお休みします・・・

SAMTAさん

「翻訳」も楽しく読ませていただいています。

ゆひさん

初めまして
(韓国ドラマ)ベートーベン・ウィルス→キム・ミョンミン氏→(ブログ)はんあり→SAMTAさんファンの韓国語は全く読めないムスカリです。

SAMTAさん、ゆひさん

お二人の応答とても興味深く、楽しく読ませてもらってます。
翻訳文+楽しみな付録付きという感じです。
これからもよろしくお願いしま~す。




 

ムスカリさん

わ~読んでいただけて光栄でごじゃいます^^

そしたら、ドラマ見ないといけませんね。
ちょうどMnetの放送が終わって録画し終わりましたので
ぜひ見てみてください~♪

そして土曜はよろしくお願いします。

あともう少ししたらスンジョンさんお迎えに向かいます♡

ムスカリさん 
こちらこそどうぞ宜しくお願い致しま~す(^^♪

SAMUTAさん ムスカリさん
週末のイベント楽しんできて下さーい (^^)/~~~

ゆひさん

ありがとうございます。
イベント終わり、再び、コツコツ翻訳を再開しました^^;;;


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MMエンターテインメント
キム・ミョンミン様

プロフィール

SAMTA

Author:SAMTA
横浜在住
韓国ドラマ・映画好き
韓国俳優キム・ミョンミンさんの
カンマエに嵌ったのが2009年5月。
それからミョンミン道一筋です☆
韓国語、韓国料理など韓国文化全般に
興味があります。☆

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