topimage

2017-08

도깨비 トッケビ小説 翻訳始めました・・・ - 2017.02.25 Sat


トッケビ本
トッケビって日本語ではいちおう「鬼」と訳されますが、
正確には「鬼」ではない。

韓国固有のもので日本には同じようなものはないそうです。
Wikiより抜粋
トッケビ(韓国語 : 도깨비)は、朝鮮半島の昔話に登場する妖怪である。姿は人間に似ており、悪戯好きで特殊能力を持つ。トッケビが登場する代表的な昔話はパンソリの題目としても有名な「フンブとノルブ」である。
トッケビは、朝鮮の民話に登場する。怖い存在とされているが、ユーモラスで、かつグロテスクな妖精または小鬼でもある。いたずら好きで、悪人をたぶらかし、善人には富などの恵みで報いた。朝鮮の昔話には同様な人ならぬ者として鬼神(韓国語 : 귀신)が存在するが、鬼神が死者の霊魂から生まれるのとは異なり、道具類など無機物が年数を経た末にトッケビが生まれるとされ、付喪神的な存在でもある。ほうき、オンドルの火かき棒、すりこぎ、唐竿のような広範囲な物と、時には少女の血を塗った木さえ含む。

とあります。
のでトッケビは「鬼」とは訳さず「トッケビ」そのままで訳したいと思います。

それでさっそく小説本を購入し、イントロの部分だけを訳してみたんですが。
面白いです。
1話の場面が生生しく蘇りました。
ドラマはもちろん最高でしたが、本は本で面白いです!

一般的に人の「生命観」は一度生まれて一度死ぬ「一生観」です。(一生一死)
それに対しキリスト教の生命観は「二生観」を主張します。
死んだあとの霊魂はそれぞれの信仰の深さによって天国と地獄に行き再び生まれるというものです。
仏教的生命観は「多生観」。我々の生命は「前世」「現世」「来世」にわたって何度も継続するという
ものです。いわゆる「輪廻転生」ですね。

ドラマ「トッケビ」はこの仏教の「多生観」をベースに描かれているようです。
(ドラマの中では人は4回生まれ変われると言ってますね)
人間の「生と死」、「出会いと別れ」というテーマはへたをするととても陳腐になりがちですが
設定のユニークさと展開のたくみさ、にくらしいほどうまいセリフ回しで最高のドラマになってます。
もう何度も書いているので「いいから早く見せろ~」と思われる方も多いと思いますが。
私もそう思います!(笑)
実際、tvN自体もトッケビがあまりによかったので、後遺症(フユチュン)から抜け出せないでいるそうで^^;;;
私もこれを超えられるドラマが本当に現れるのか心配です・・・・←余計なお世話^^;;

小説本は台本をノベライズしており、読み進めると映像が脳裏に蘇るこれもまた素晴らしい仕上がり。
(褒め殺し、か?(笑))
と言っても訳すのに相当な時間を要するので、どこまでいけるかわかりませんが。

3月からMNETで日本語字幕付きが放送スタートとなります。
残念ながら日本語字幕は字数の関係でドラマの世界観を完璧にフォローするのは
難易度がかなり高いと思われます。
もちろんストーリーの展開、意味は十分にわかるでしょうけど。
でもそのままではあまりにももったいない。
この秀逸なドラマをさらに深く理解するために、イントロの翻訳がお役にたてればいいなあと
思う次第であります。

なお、時々修正することもありますので、転載はご遠慮くださいませ。

ょっと長い・・・です。小説ですので・・・
とりあえずP7~P25まで
tokkebi.jpg
<人物関係図>クリックで拡大します。三神婆さんについてはまた別途。

悲しくもきらびやかな神~トッケビ1
(P7)
黒い夜だ。
その夜を明るくするのは広い野原の上に広がった白い蕎麦の花だ。雪が降り積もったように白く咲いている。ほのかだが明らかに輝いているものたち。蕎麦の花の上を飛び回る蛍。美しくも悲しい光景だ。長い年月に腐食し錆びてしまった重たい大きな剣が野原の真ん中に突き刺さっている。遠く白い蝶一匹が飛んでくる。ぱたぱたと羽ばたくと風が吹き、蕎麦の花が揺れて海の上で砕ける泡沫のようにバラバラになる。蝶が剣の上に静かに座った。静かだった野原に大きな泣き声が降り注ぎ始める。剣が泣く。あまりの勢いに剣が白い花火に変わる。天地を揺るがし神が剣に向かって言う。

 「唯一トッケビの新婦だけがその剣を抜くであろう。
 剣を抜けば無に帰り安らかになるであろう」





(P9)
―ロマンチックな呪いー

陰鬱な晴れた空が不吉きわまりなかった。戦場というところは運が味方するところではなかった。人々が呻き、血を流すところだった。笑うことは最後の最後の事として、それさえも血を流しながら笑うようにするのが戦場だった。
 何人かの人を殺したのだ。
 この戦場でも最後の勝者となるもの、戦争の神、人々は彼を神と呼んだ。
高麗最高の武臣、キム・シンはしみじみと数えてみた。
 手は無意識に動き敵の首を一太刀に切り落とした。すでに誰かの血で覆われた剣の刃にまた違う敵の血が加わった。見回すと敵軍であれ味方であれ皆死んでいった。無辜の民たちは引き裂かれ泣いていた。話すことのできない獣たち、足を切られた馬が気を失ってうなりを上げる音はまたどれだけ凄惨であろうか。向こう側の死体と死体の山の上にカラスの群れが飛んできた。ほじくりむさぼられていた。
 私の肉体と精神もむさぼられているのではないか?彼にはそのような後悔が湧く時もあった。しかしこのすべてのことが自分のためだったのだろうか。私の国 高麗のためだった。また、その国の神、主君のためだった。
 キム・シンは叫びながら敵に向かってもう一度駆け出した。悩むことはなかった。ただ切ってまた切れば終わることだった。彼は血で作られた神なのだから。晴れた空の上に稲妻が走った。稲妻の閃光の下 契丹の旗は燃えて高麗の旗がはためいていた。
 「キム・シン将軍だ!」
 「キム・シン将軍 万歳!」
数万の大軍が再び主君の地、王の地に戻ってきていた。
戦いを終えた馬たちのひずめの音が疲れていた。しかし一方ではさっぱりしたように軽快だった。戻ることができなかった者達もいたが、このようにキム・シンは戻ってきた。なので民らは嬉しそうにキム・シンの名を叫んだ。自分たちを守ってくれたのは長い髪を垂らして背筋をまっすぐに伸ばしたまま馬に乗ったキム・シン将軍だった。
(P11)
 都城に入っていく門の前には城門を守る守備兵らが立っていた。無傷な者など一人もいないキム・シンの部下たちは馬から降りて雄叫びを上げた。敵国と戦って勝利し凱旋した彼らは正門が彼らに向けてぱっと開くものだと信じて疑わなかった。
 「門を開けろ!凱旋将軍 キム・シン将軍様だ!」

 「キム・シンは鎧を脱ぎ、王命を受けろ」
たかが正七品の別将のやつが正門前に立ちふさがったまま上将軍に対する態度なのかあきれ果てた。キム・シンのそばを守っていた大将一人が腹に力をこめて、王命を受けろという別将に大声で叱りつけた。
 「貴様!誰の前にいると思ってそのような行動をとるのか!」
刀を抜き威圧しようとする彼をキム・シンが折れていない右腕を上げて静止した。キム・シンは都城前に立った兵士らの以前とは違う空気を読んでいる最中だった。
 「大逆罪人であるキム・シンは剣を納めよ。跪き王命を受けろ!」
 大逆罪人。この者が大逆罪人だといった。疲労感で沈んでいたキム・シンの目に動揺が走った。
 「貴様!気でも触れたか!」
キム・シンの部下が横で大声を張り上げ始めた。
王命。王命であるはずがない。何かの間違いだ。そうであってはならない。その王命に従い闘い戻ってきたところなのだ。キム・シンが体を動かすと城壁の上の射手らが一斉に弓を引き彼を狙った。
 「大逆罪人 キム・シンは!」
そんなはずがない。自分を狙う弓矢が王命のはずがない。間違いなく主君の選択がこれだと言うのだろうか?
 「陛下に謁見する。道を開けろ」
一歩、キム・シンが踏み出した。しかし城壁の上の軍も正門の前の軍も退かなかった。キム・シンと叫んでいた民らはバタバタと倒れて息絶えていった。何か熱いものが足の下から上がってくるようだった。
 「どかぬと間違いなく死ぬぞ!門を開けろ!」
彼が剣を抜き、動いた瞬間、ビュンビュン!虚空を引き裂き矢が飛び込んできた。キム・シンの後ろに立っていた兵士らが、あ、という短い悲鳴と共にどうすることもできず倒れた。兵士らの間を飛んできた矢が地面の上に突き刺さった。あちこちで血が流れ、悔しさで容易く死ぬこともできない彼らが血を吐いた。
3,4日昼夜を問わず闘った。野望に満ちた敵も彼らを殺すことができなかった。しかし、このように空しく剣を一度も握ることなく死を迎えるとは。剣を握った手が震えた。後ろで残った兵たちは何とか生きようとしていた。城門がゆっくりと開くのを眺めながら、キム・シンはたった一人で城門に向かった。一歩一歩、歩くごとに怒りが深く刻まれた。

(P13)
 正殿前で彼が歩みを止めた。正殿に入る門の前で王妃が行く手をふさいでいた。あまりにも美しい主君の妃はキム・シンのたった一人の妹だった。王妃の小さな手がチマの裾をぎゅっとつかんでいた。涙があふれそうな目。キム・シンは歩みを止めたまま、その目の向こうにある光景を注意深く眺めた。彼の肉親らであり、使用人たちまで縄で縛られたまま罪人の服を着て跪いていた。
憔悴した姿に拷問を受けたと察しがつく。
 怒りに満ちた矢が自分に向かって飛んできて刺さってもわからなかったことを今ようやく悟った。
王はキム・シンを捨てた。正殿の上のあの高い玉座、あの玉座に座った幼い王、私の主君。
 「民の上に王、王の上に神。その神はキム・シンを称するのだと言います。」奸臣のへびのような舌が王にささやき、キム・シンを見おろす王の目も燃え上がっていた。感情がもつれた目だった。彼はもっとも忠実な臣下であったが、王の座をもっとも脅かした者だった。キム・シンの熱い目、王にとって常に頼もしかったし、世の人々にとっても「もっとも」信頼できた目を王はじろりと睨みつけた。
 「あの者の終わりない勝利の報が民を惑わしあの者の権勢が重ねて王室を嘲弄するのであります。国法に処してくださいませ」
(P14)
キム・シンは静かに頭を横に振った。しかし、頭を振り終わる前にすでに決心し終えた王の拳が強く握られた。
 「どうしてもこうまでなさるのですか?」
震える声が残酷だった。ある戦争から戻ってきた無数の涙よりも、自分の声がもっとも残酷に感じるようだった。
 「これ以上は来るでない。何としても立ち止まれ。その場で止まって逆賊として死になさい。さすればそなた以外のすべての者を助けてやる」
 幼い王の視線がしばし揺れ動いた。私と同じように、幼い妃、美しい妃に視線が横切った。王妃は王に背中を向けたまま兄であるキム・シンに向かっていた。
 「一歩でも近づいたならば、貴様の一歩で、皆を殺して貴様の足元に敷き詰めてやる」
王の親衛隊が攻撃体制を整えた。釘づけになっていたキム・シンが妹に向かって体を回した。子供だとばかり思っていた妹はいつこのように成長して私の前に立っているのか。自分が戦場をさすらっていた間妹が送ってきた書簡を反復した。彼は妹を守りたかった。
 「行ってください。将軍。私は、私は大丈夫です」
 「・・・妃様」
血走った目から涙がこぼれた。
(P15)
 「いいえ、将軍。すべてわかっています。もしこれが最期ならこれもまた私の運命です。ですから行ってください。止まらずに行ってください。陛下のところに」
白い正服を着た王妃は最後まで腰を曲げたり、肩を震わせたりしなかった。キム・シンは自分の妹から、一国の妃からその意志を読み取った。彼女の涙ひとしずくと共にキム・シンは一歩踏み出した。
 一歩、キム・シンの一歩に矢が雨のように降り注いだ。使用人らが泣きながら、彼ら同士抱き合ってみたが、すでに死を目前にしていた。泣き声でキム・シンの心は張り裂けそうだった。また一歩。一歩踏み出し王とキム・シンの距離が狭まった。王妃も結局キム・シンの味方についたのだ。キム・シンの歩みが幼い王の不安をさらに煽っていた。
 「謀反だ!あの家の者すべて生かしておくな!王命だ!」
もう一度注いだ矢にキム・シンの肉親たちが倒れた。振り返ってみた王妃の背中にも矢がささっていた。王妃が静かに倒れた。柔らかい絹の上に刺繍が華やかに施された王妃の背が血に染まってさらに花のようだった。キム・シンの目にも涙がこぼれた。結局キム・シンは歩みを止めた。
 「罪人を跪かせろ!」
機を逃さずに王が命令した。キム・シンのもっとも近くに立った親衛隊が刀を抜いて一気にキム・シンの膝を切りつけた。どさっ。地面に膝を落とす音が凄然としていた。刀で切らずとも、いつでも王の前では跪くものだが、彼は今ただ他人の意志で跪いていた。
 「将軍~!」
知らせを聞いてキム・シンの部下の一人が泣き叫びながら門の中に飛び込んできた。跪いたキム・シンを発見した彼はキム・シンを掴んで支えながら共に跪き、権力の座に座った王に向かって叫んだ。
 「陛下!なぜこのようなことをなさるのですか!天が恐ろしくないのですか?」

天、あの者が天と言った。いつから天はあの者たちの味方になったというのか。王の唇が歪んだ。キム・シンは必死に精神を集中させぼやけた視野で王の歪んだ顔を見た。目がくらんだ王の姿が怒りに沸き立つ溶岩のような胸に刻まれた。
跪いても目を伏せないキム・シンと目が合うと王はもう我慢がならなかった。
 「罪人の目つきが炯炯としている、心中穏やかでない。必ず斬首しろ!」
膝を切りつけた者が再び刀を抜いた。しかし今回は刃がぶつかる音がした。兵士の刀を簡単に防いだキム・シンがぼそっと言った。
 「そちの仕事ではない」
(P17)
時の武将だ。どんな敵も彼の首を刎ねることができなかった。少し前までこの兵士にとってもキム・シンは神だった。兵士は手を震わせながら刀を納めた。
 「最後はそちに頼みたいのだが」
怒りと悲しみでかすかに震えるキム・シンの低い声が自分の部下に向けられた。一心同体だった剣を部下に渡す彼の惨めな気持ちを誰も計り知ることができなかった。城門の外で民らの押し殺した慟哭がうなり声のように聞こえてきた。我々を救った将軍様を助けてくれと哀願する彼らの声は遠くから絶えず聞こえた。命を預けられた部下の目から涙があふれた。彼もキム・シンと戦場で共に戦ったこの国の英雄だったので最後も一緒だった。神のようだった彼の剣を受けとり差し入れた。それと同時に王が送った兵の刀が部下の背中を切った 
 キム・シンの胸に差しこまれた剣が大きく振動し荒々しく轟いた。かっ、キム・シンが口から血を吐き、座ったまま倒れた。
部下の顔が見えなかった。彼もこのように逝ったのだろう。
 遠のいていく意識の中、遠くに倒れている王妃を探した。王妃は倒れたまま自分の最期を見ていた。また彼の主君であった王を見ていた。生の終わりが王妃に先にやってきた。地面に倒れキム・シンを捕えるようにかすかに動いていた指がトン、地面の上にこぼれた。血に濡れたまま玉の指輪が地面の上を転がった。
 私の幼い妹が逝ったのだな。キム・シンの目はついに閉じてしまった。最後の場面は戻っていく王の後ろ姿だった。自分が大切にしていた臣下と自分の愛した女性の死を最期まで見ることのない残忍な王。
 「誰も大逆罪人の屍を葬ってはならない!野原に捨て置き野獣と鳥獣の餌にしろ。獣の餌になる、その程度があの者にはふさわしい。王命だ!」
 奸臣の声が倒れた身体のすみずみまで響いた。この程度が私の運命だったのだな。どんな神も人間を助けてくれはしない。神は聞いていない。
 1日の中でもっともきらびやかな午後。ある者にとっては「神」だった彼は自分が守った主君の刃に殺された。
広い野原には遺体が一つさびしく横たわっていた。夜になってまた朝が来るのを繰り返し、野原の上には好き勝手に野草が伸び始めていた。死体の一部は言葉の通り野獣と鳥獣の餌になった。そしてまた、一部は雨と雪に洗われ、風に散り散りになった。それでも残りは一部だけが土に戻っていった。剣1本だけが高くそびえ残った。人間の中の神はそのように簡単に忘れられた。残っていた剣さえも黒く腐食されるだけの歳月が流れた。蝶一匹が最後にやってきた。
剣が打ちこまれなかった場所に共に打ちこまれたキム・シンの霊魂を探してやってきた神だった。

 -お前は命をかけて民を救ったが民はお前を忘れたのだな。人間というのはそんなものだ。自分勝手だろう。だからお前は忘れられたのだ。
 キム・シンの霊魂はずっと悲しく泣いていた。肉体が土になる時にも怒りは静まらなかった。怒りの方向は定まらなかった。主君?主君を惑わした奸臣?自分を忘れた民?いや、むしろ人間の間をひらひらと舞う神に向けたものかも知れなかった。
 -期待すべきでないのは、聞いてくれない神です。

 -人間は簡単に変わる。欲が尽きる事なく、犠牲は当然で、恩はすぐに忘れ、信義は壊す。そのような者らの願いなどは価値がない。

 神の声を聞きながらキム・シンは神に祈った民らの声を思い出した。たかがこのような神の考えや胸に抱いていた神に彼らはすべてを掛けていたのだ。
(P20)
 -私も民もただ神にからかわれただけ。私は忘れていませんでした。
 キム・シンはいっそ神より私を神のように思った人間を信じることにした。蝶の羽ばたきが軽かった。キム・シンの霊魂が言った。
 -誰の言葉が正しいが、賭けてみますか?
畏れ多くも神と賭けをした。キム・シンはもう失うものはない霊魂だった。


いつの間にか剣が錆びてさらに一晩中雨が降るだけでもバラバラになってしまうほど時間が再び流れた。30年が流れ、依然としてキム・シンに会いにくる者はいなかった。蝶は苔が生えた剣の柄の周りをぐるぐる回り、彼の勝利を予言した。キム・シンの家来がその場所に現れたのは一晩中雨が降る直前の日だった。
 暗い夜だった。老いて病にかかりもう死ぬ日だけを待っている侍従が自分の孫を連れて野原に訪れた。死体を葬ることができないように立てた兵士らももはやいない。ここを探し侍従は何日間かさまよった。
 すべてちりぢりになったキム・シンの前に、いや死体は消えて剣だけが残ったその場所で彼の侍従が物悲しく泣いた。キム・シンに仕え腰を曲げ挨拶をした彼はもう本当に腰が曲がった老人になった。意のままに動くことができない体でかろうじて手を合わせお辞儀をした。白くなった髪と髭が風になびいた。お辞儀をする祖父に従い、いたいけな幼い孫も地面に頭を付けてお辞儀をしていた。
 「ずいぶん遅くなりました。申し訳ありません。ナウリ、わたくしはもう逝かねばなりません。この時になってようやくお会いすることができます。」
 「この剣がナウリなの?」
地面を掴んだ手をパジにこすりつけて孫が聞いた。祖父は悲しい目で子供を引き寄せ、剣の前に立った。
 「これからはこの子がナウリにお仕えします。」
 侍従が孫の頭をなでながら話た瞬間、剣がう~んう~んと泣き始めた。耳ざとい子供が剣が泣く声を先に聞いて驚き息を止めた。
 キム・シンは忘れられていなかった。
 キム・シンが勝った。
 蝶が飛んできて、剣の柄に止まった。子供が泣く剣と白い蝶を不思議そうに眺めると、蝶を掴もうと手を伸ばした。台風が来るように空が瞬く間にさらに真っ暗になり、吸い込まれていくような暗闇の上に火が落ちた。巨大な風が人の身体のように蝶に従った。蝶が剣に止まると剣が火の玉になった。鬼火だった。空から神の声が降りてきた。

 -お前が勝った。しかしお前の剣には無数の血がついている。お前には敵だったが、それもまた神の被造物だ。一人不滅の生を生きながら、愛する者達の死を見守るのだ。
 火の玉が徐々に大きくなると剣の下にキム・シンの肉体が現れ始めた。剣が刺さっていた、血を流した姿そのままに鬼火はキム・シンの身体になった。

 -どんな死も忘れてはならない。私が遣わした褒美であり、お前が受ける罰だ。
 肉体になったキム・シンの口から息が吐き出された。剣が胸にささった瞬間の苦痛が生生しく蘇った。青い火がうねりながら彼の身体をつつんでいた。彼は青い火の中で燃え上がっていた。

 -ただトッケビの新婦だけがその剣を抜くであろう。剣を抜けば無に帰り、安らかになるであろう。
 
 神の声が生生しかった。キム・シンがゆっくりとまばたきした。老人になった侍従と驚いた子供が見えた。
「ナウリ~!」
侍従がびっくりして大声でキム・シンを呼んだ。キム・シンはゆっくりと起き上がった。
上将軍キム・シンだった。戦場を席巻した姿そのままの目力だった。
(P23)
いやそれよりもさらに炯々としていた。子供はすべての事が驚きで恐ろしく、祖父の後ろで身体を隠した。キム・シンは再び戻ってきた肉体感覚が固く、ゆっくりと動いた。刹那だった。熱い火の玉が自分の身体になった。しかし胸には依然として火の玉がいた。
 「行かねばならないところがある。」

 彼はすぐさま宮殿に向かった。怒りが神だけに向かっているのではなかった。まずは王から訪ねなければならなかった。王に聞くこともあった。復讐をしなければならないが、聞くのが先だ。なぜ自分を信じなかったのかと。
突然のキム・シンの乱入に宮殿はひっくりかえった。誰だ、何者だ、キム・シンを忘れた者たちがそのように聞いた時、彼はただ手振りで彼らを片づけた。もんどりうった彼らが恐ろしさにぶるぶる震えるのを後にして、ただ王に向かった。王の横には悪賢いことをささやいた奸臣の首を一ひねりし王の寝殿に向かった。
歳月はキム・シンが死んだところだけに流れたのではなかった。王の寝殿にも流れた。霊魂のない肉体が白い 斂衣に包まれた状態で目を閉じ硬くなっていた。
「遅かったか・・・」
(P24)
そして王の枕元に散らばった絵を見た。王妃の美しい顔が着色されていた。王が最期に残していったのはキム・シンの妹だった。
無念の思いがするだけだった。ひっくり返った奸臣たちに、大軍に何の意味があるか。答えなければならない王は死に、愛する私の肉親らは私と共に死んでから久しい。残したものは何もなかった。
夜が明ける瞬間は血のように真っ赤だった。キム・シンは野原に戻っていく道、その赤い光で、いったいこれからどうすればよいのか感覚を掴めなかった。
彼が再び30余年の歳月を送った野原に戻ってきた時、その場所には石の墓がひとつできていた。自分の死体があった場所には侍従の死体が横たわっていた。侍従が連れてきた孫、その幼い子供だけが汚れた小さな手で石を積んでいた。侍従の石の墓。キム・シンはどこかを打たれたかのように固まってしまった。
手の甲の上に血管が浮かび上がるほど握りこぶしを強く握った。どんな死も忘れるな。神はまさに昨夜言った。自分はどれだけ愚かだったのだろうか。私を忘れないでいてくれた彼を置いて、何を得ようと遠いところに行ってきたのか。子供のそばに近づいた彼が石を掴み、子供が積んだ墓石の上にもう一層積んだ。骨身にこたえる作業だった。
(P25)
「お前が・・・私が受ける最初の罰のようだ。」
もう彼を記憶する人は誰もいなかった。最後の人さえ自分が見送ってしまった。再び一人になっていっそ倒れてしまうのがいいのではないかと思った瞬間、小さい子供の手が彼をぎゅっと掴んだ。
「お辞儀を受けてください。これからは私がお仕えします。お爺様の遺言でした。」
子供の心もとないが恭しいお辞儀が彼の前で行われた。彼の目が明け方の空のように赤くなった。
「復讐に目がくらみ、私を訪ねてきた者に、どうしていたか、安否の一言もかけることができなかった。それでもそうしてくれるのか」
物悲しげな声は子供がしばらく仰ぎ見なければならない者から出てきた。子供はうなづいた。トッケビと彼に仕える人間、長い縁の始まりだった。
彼は子供を連れて漫漫たる海原を渡った。異国に、彼を覚えていないことが当然な地に向かった。喜怒哀楽がすべてあったと思ったが、もはや何も残っていない地には二度と戻ることはないだろうと思いながら。


(つづく・・・?)

● COMMENT ●

1話がすでにすごくすごく懐かしいです~~~
ようやく噛み締めてゆっくりと読むことができました(o^∀^o)
このたくさんの量の大変な翻訳をありがとうございます。


直訳字幕版を見ているので、ドラマも詩も訳されてわかってはいるのですが・・・・
14話の 神の啓示、産神のあたりがその字幕ではチト分かりにくく……
気長にいつか解説いただけるのを待っております~~

このみさん お読みいただきありがとうございます。

私もこれ訳したのが遠い昔のことのよう(笑)

体調も復活してきましたので
ゆっくりと再開しようと思います。

14話ですか・・・いつかな・・・(笑)


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プロフィール

SAMTA

Author:SAMTA
横浜在住
韓国ドラマ・映画好き
韓国俳優キム・ミョンミンさんの
カンマエに嵌ったのが2009年5月。
それからミョンミン道一筋です☆
韓国語、韓国料理など韓国文化全般に
興味があります。☆

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