topimage

2017-09

韓国ドラマ「トッケビ」小説 コツコツ翻訳2ー三神ハルメー - 2017.03.12 Sun

samsin1.jpg

※訳が数行抜けていたので赤字追記しました。訳のニュアンスが一か所間違っていたので赤字修正しました。
むじゅかしい~
 2017/3/19

が付けば3月も中旬・・・・
3月に入っていきなり、高熱が続き(正確な診断は受けられなかったのですが腎盂炎だった模様・・・)
ほぼ1週間な~んにもできないまま過ぎてしまいました。

すっかり体調も回復しましたが来週からまたまた仕事が忙しくなるので
あまり無理せずにゆっくり行きたいと思う今日この頃。
しかしまあ、お医者さんを最初に選ぶのがとっても大事っていうのが今回の教訓でした。
信頼できるホームドクターを探しておかないと(^^ゞ

てさて「トッケビ」本翻訳の続きです。
カテゴリーに「コツコツ翻訳」というのを加えました^^;;
やはり勉強はコツコツだよね(-_-)

後輩も言ってましたが本の方が分かりやすいと。
確かにドラマは状況だけ見せて説明の代わりにするけれど
トッケビは高尚な内容なだけに理解が難しい・・・
本は背景とかいろいろ説明してくれるのでわかりやすいです☆

翻訳に入る前に今回は
ドラマに出てくる「三神」について解説します。
三神삼신サムシン:韓国固有の神様で「妊娠や出産を司る神様」
三神ハルモニ(ハルメ)(お婆さん)と親しみを込めて呼ばれるそうです。
今回のトッケビではイエルさんが特殊メイクで見事に老婆に扮して登場しますが
彼女の三神役がドラマの中でも重要な「語り部」として一役かっています。
ところで韓国ではすべての赤ちゃんは三神が授けてくれると考えられているそうです。
赤ちゃんがお母さんのお腹の中から出て行くときに三神婆さんが「早く出て行きなさい!」と
お尻を叩くのでお尻に青い痣ができ、お赤ちゃんは痛くて「おぎゃ~」と泣くのだとか。
面白いですね☆


翻訳ですがところどころ自信がない部分がありますので後から修正する可能性あります。
ですので転載はご遠慮くださいませ~

P26
―トッケビ新婦―
何か月か掛かって到着した、遠い異国の地。そこも高麗と似ていた。そこにも戦争があった。最初はフランス、その次は英国に、その土地の主人が変わって、主人が変わる時にはその地に住む人々がまた血を流さなければならなかった。トッケビになったキム・シンはただ眺めたり、時には闘いに出ていったりもし歳月を過ごした。
 年をとならない彼をいぶかしく思う人々が現れる頃には故国の地を踏んだ。異国と故国を行き来した。最初に彼に仕えた子供がお爺さんになり死んだ。彼の孫がまた彼に仕えて死んだ。異国の地には彼らの墓碑が3,4つ出来たが、キム・シンはその墓碑を立てるだけで、その主人にはなれなかった。





P27
 長いトッケビの足が故国の地を踏んだ。すでに高麗も朝鮮でもない韓国になっていた。戻ってくるたびに早く変わっていった。最初に生きた高麗よりは朝鮮がましだったし、朝鮮よりもだめな時代もあった。いずれにせよキム・シンを取り巻く世の中は続いて変わっていった。古くなったものの趣は復元した都城とその道程度にだけ残っていた。
ただ人々、人々が着て、食べるものだけ変わっただけ、本性は同じだった。争い、また愛しながら、いつも似たような形の感情を積んでは崩して生きた。(徳寿宮)石垣道の横を歩きながら、彼は落ちた紅葉の葉を踏んだ。自分が馴染んだ異国の地も紅葉が有名な場所だった。
歩いてみると、奇妙な壁があった。人々の目には見えない壁でしばし歩みを止めた。トッケビの視線が届いた所、中にいた男が視線を感じて窓の外を見た。
 「・・・トッケビ?」
窓の中の男が独り言を言った。冥途の使者(=死神)だった。死神と亡者そして神だけが門を開くことができ、見ることができる死神の茶屋の内と外で二人の男が向かいあった。
 「死神?」
二人は神とつながっているが、他の種類の霊物だった。トッケビが神と賭けをしたりもし、神出鬼没な者であるとすれば、死神は・・・公務員だった。神の仕事をする者だった。亡者の魂を葬り天国や地獄に送るとても苦労が多く疲れる仕事を生業としていた。前世に洗い流すことのできない罪を犯したため、避けることができないことだった。
死の入り口の前までやってきた彼らがこぞって口にした通り、死神は真っ黒な服をまとっていて黒い帽子をかぶっていた。つばの広い黒い帽子は彼らの顔を隠してくれたりもしたが、何よりも帽子をかぶると平凡な人々は彼らを認識できなかった。
 「田舎くさい笠をかぶっとる」
窓の外でぶつぶつ言うトッケビの言葉に死神は呆れた。
 「ふんっ!」
かっとなった死神が彼を呼んで目の前に立たせるよりも先に、トッケビは背をぐるりと回し、行った道を引き返した。
 「つまらぬものを見た。死神とは」
死神はトッケビにもそのように神々しい存在ではなかった。
都心のど真ん中にある巨大な邸宅、トッケビが百余年前からこの地の者のように建てた彼の家。アーチ型の窓はとても大きく、空がそのまま入ってしまうほどだった。天井にずしりと差し込まれたクリスタルのシャンデリアは華やかな物を好む彼の嗜好だった。古い掛け時計が重たい振り子を支えながら動いていた。これは以前侍従が買ってくれたものだった。額ごとに入った白黒写真の中には写真として残さなくても忘れることができない人々がいた。
目くばせで火を付けた。燭台の蝋燭の火が広がっていった。久しぶりに戻ってきたにも関わらずほこりひとつない家はやはり彼に仕える者のおかげだった。家の中を見渡しカーテンを開けた。
 「ナウリ~!」
騒々しく男と子供が家の中に入ってきた。
 「20年ぶりにおめにかかります。これまでご無事でいらっしゃいましたか?」
 「そちも達者でいたか」
 「わたしはとても年を取りました。ナウリは依然としてすてきです」
 「それほどでもないと思うけど」
 やっとトッケビの視線が子供に向かった。唐突な言葉を吐き出した男の子は黄色い幼稚園の帽子をかぶっている。ユ・ドックァ。かわいい名札が胸にくっついていた。
 「こやつ!」
男が子供に厳しく怒鳴りつけ すばやくトッケビに再び視線を移した。
 「申し上げました私の孫でございます。ご挨拶申し上げなさい。トックァ」
 「このおじさん、誰よ」
 「お前がトックァか。私はお前の叔父であり、兄であったが、息子であったが、孫であった者だ」
長身のトッケビを子供は首を長くして見上げた。いったい何の話をしているのか理解ができずだんだんいぶかしげな表情になっていくのが見えた。トッケビがくすっと笑って膝を曲げて子供と視線を合わせた。
 「よろしくたのむぞ。おチビさん」
トッケビが優しく言うと子供は腕組みをして疑いに満ちた目を向けているだけだった。
 「申し訳ございません。4代目の一人息子であまやかして育てましたもので」
男が頭を下げ再び申し訳なさそうな表情をするとトッケビは大丈夫だと彼を慰めた。子供はまだ幼く、また私を始めて訪ねてくれた侍従の孫であった。どれだけ長く自分に仕えてきてくれた者たちだろうか。男が去った場所に自分と共に残ってくれる子供の顔を丹念に眺めた。初めて私についてきた高麗から異国の地まで共にした子供の顔ととても似ていた。
 「心配するでない。そちの家門の誰にも失望したことはなかった」
 「でもおじさん。なんでさっきからお爺ちゃんにため口なの?死にたい?」(チュグルレ?)←(笑)
 「こら!」
 「殺してください、ナウリ~」
トッケビの口元に柔らかい笑みが浮かんだ。

P31
 満月が明るく浮かんでいた。ちょうど雪が降ったため、雲ひとつない空に満月がさらに鮮明だった。ここに高いビルディングが立ったのはそれほど昔ではなかった。その中でも最も高い所にトッケビは恐る恐る腰を掛けて座った。ビール1缶を手にしていた。冬の風が冷たくトッケビの手の甲をかすめた。ビールを一口飲むとあれこれ感情が行き交った。見下ろす都市はネオンサインがまぶしかった。人々も車もひたすら音を立てて動いていた。
 「考えもなしに*。 戻ってきて見るといいものだ」
(*속도없이 ソクト オプシ:トッケビの口癖。辞書引くと「速度なく」と出てきますがこの속ソクは腹の中を意味し、あまり深く考えもせずに、という意味だそうで、お年寄りが主に使う言葉だそうです。)

寂しくも優しい声が漏れて、独り言になった。この地に対する感情はもうこのようになった。寂しく懐かしいところ。酔って少し目を閉じたが耳元に切実な声が届いた。
 「助けて。お願い助けてください」
女性の声だった。生きたくて神に祈る一人の女性の声。
 「神様がいたら、お願い・・・助けてください」
消えていく生命から出てくる気運はとても弱かった。人気のない通りだ。信号を無視し走ってきた車1台が雪道でスリップした。お腹をしっかり抱きかかえて歩いていた女性一人が車にぶつかった。ゴン。女性の身体が数歩後の道路の上に転がり落ちた。ブレーキを踏むと同時にタイヤが道路と摩擦し裂けるような音がした。車がくるくる回った。遠くへ弾き飛ばされた女性の身体から真っ赤な鮮血が流れだした。冷たい雪が積もった所が熱い血で濡れていた。
声が聞こえてくる場所の状況を察知しトッケビは首を振った。気の毒なことではあるが、1日にあのように死んでいく人が数百、数千といた。最近は神を信じる人がそれほどおらず死ぬ前にあのように切実に祈る者はどれほどもいないのだが。
また一口ビールを流し込み華やかな都市の方に視線を戻した時だった。
 「助けてください。とにかく、お願い!」
息がほとんど途絶えていて、生命もこと切れる寸前なのに、女性はしつこく神を探した。トッケビのよく伸びた眉毛の間に皺ができた。結局その場所から立ち上がり、ひょいっとビルディングの下に飛び降りた。青いトッケビの炎となって。

彼が飛び降りたのは死に行く女性の前だった。静かな海辺がある村の入り口だった。全身を包んだ青い炎を消しトッケビはゆっくり女性の前に近づいた。事故を起こした運転手は逃げてからずいぶんたっていた。悪い奴らはこのように善良な人のものを奪っていく。
 茶色の靴。靴が女性の視野に入ってきた。ほとんど閉じかけていた女性の瞼がぷるぷる震えていたのに素早く開いた。
 「誰ですか?」
 「誰でもよい 誰か、だ」
 「お願い、私を・・」
 「人間の人生には関与しないというのが私の原則だ。」
 「わたし、こんな風には死ねません」
女性が泣きながらトッケビの足首を掴んだ。生きようとする意志が実にすばらしかった。人間とはそういうものだ。私も一時人間だったのでよくわかった。少し気の毒な目で女性を見た。
 「あなたが助けてくれというのはあなたではないな」
 「どうか。子供だけでも」
足首をかろうじて掴んでいた手からぷつっと力が抜けてしまった。お腹の中の命もまた消えていくのが感じられた。トッケビは長い溜息をついた。
子供。彼がトッケビになった時、彼に初めて仕えたのは子供だった。侍従の孫、トッケビが侍従への申し訳なさに恩返しすることができる唯一の術だった。
 「あなたは運がよかった。気の弱いトッケビに会ったからだ。今夜は人が死ぬのを見たくないということだ」
彼は手の中に火の玉を作った。トッケビの炎を集めて女性の身体の上に浮かばせると、その気運が自ずと女性の身体の中に浸み込んでいった。その炎の中心にあった火の玉がすばやく女性のお腹の中で一杯になると、こと切れていた息が立ちどころにしっかりと呼吸し始めた。白い雪で覆われていた道に桜の木が生き生きと花を咲かせ桜の花びらがハラハラと降り注いだ。血が流れていた場所に桜の花びらが積もった。トッケビはしばしその光景の主人になっていたが、またたく間に消えてしまった。花びらで覆われ女性は再び生き返った。

その奇妙な場所に少し後に現れたのは黒い靴を履き、黒い帽子を被った男だった。明らかにこの場所にいなければならない女性がいない。女性の血痕だけが残っているだけだった。この雪の上の花びらは何だというのか。壊れた車の破片もあった。事故は明らかに予定通り起きていた。死神はうろたえた目線で手に持った封筒から紙を取り出し眺めた。

 「チ・ヨニ 27歳 1998年2月14日21時5分 事故死」
 「無名 0歳 1998年2月14日21時5分 事故死」
手首を回して時計を見る。21時5分だ。1秒の狂いもなく来た。

P35
波の音が近くに聞こえる丘の上の古びた家に一人の女性が住んでいた。死者の名簿に上がった者が死なずに生きていること、これは奇跡と呼ばれた。庭に干しておいたわかめを取り込み、女性は忙しく庭を歩き回る娘を愛おしい目で見つめていた。風に髪が乱れ、首の後ろの青いあざが現れた。ウンタクはもう9歳になった奇跡だ。
 「ウンタガ、 今度の誕生日にはお餅作ってあげようか?」
子犬をなでていたウンタクが手のひらを広げ空の上から落ちてきた花びらを掴んだ。
 「はちみつ餅?虹餅?」
花びらを手に持ってウンタクが女性の方へ振り向いた。
 「母さん、わたしもうお祭りじゃなくてパーティしたらだめ?」
 「何が違うの?」
 「お餅がケーキに変わるでしょ。わたしも蝋燭を付けて願い事したいの」
思いもしなかった言葉に女性はぷっと吹いた。ウンタクがお餅を好きなので、お餅で誕生日のお祝い膳を準備した。大事な娘のお祝い膳、ケーキを望むなら難しいことではなかった。

女性がしょっちゅう訪れる野菜を売る老婆がいた。陸橋の上に新聞紙を敷いて座りあまり意欲もなく商売をしている老婆だった。未婚の母である女性をよく知る者でもあった。そのような女性が気の毒に思ったのか老婆がある日トッケビ神に関する話しをしてくれた。
トッケビに下された意地の悪い神託に関する話。
不滅の身として再び蘇り、この世のどこにもいて、どこにもいない、今もどこかでトッケビ新婦を探し彷徨うあまりにもロマンチックな呪い。その話しを聞いて女性は神様がひどすぎると思った。それにも関わらず老婆は生死の岐路に立った時、切実に祈りなさいと言った。気の弱いある神が聞いているかもしれないと。
本当に神は聞いていた。女性が死にそうになって切実な気持ちで助けてくれと祈った時、「誰か」と名乗る神が現れた。そしてその気の弱い神が女性と子供を救った。死にかけた子供はそのように生き返った。運命のように。
 「ワンコだ!」
誕生日のロウソク を吹かせてあげるという女性の約束に喜んだウンタクが突然、門の前に走りだした。女性の顔が暗くなった。とてもかわいい子犬に会ったというようにウンタクは空を撫でていた。
女性の奇跡の子供は、奇跡を得た変わりに見てはいけない物を見た。しかし大丈夫だった。どっちにしろこのように生きているのだから。女性は努めて笑みを浮かべウンタクを呼んだ。まだ寒いから家に入ろうと。

女性は約束通りケーキを準備した。門の外から走ってくる音、靴を脱ぐ音が忙しく聞こえた。小さいお膳の上にケーキを載せ、蝋燭を刺した。門が開き、ウンタクが浮かれて飛び込んできた。
 「ケーキだ!わたしたち今からパーティするの?」
愛らしい娘を見て女性が笑みを浮かべた。
 「うん。早く来て座って。蝋燭つけて」
 「わたしがつけてもいい?」
 「ウンタク。もうすっかり大きくなったからできるわ」
 「わたしもう9才だから」
肩をすくめながらウンタクがマッチを擦り、9本の蝋燭に一つずつ火を付けた。ケーキの上の蝋燭が明々としていた。一緒に明るく笑ったウンタクが母の顔を穴のあくほど見つめた。いつも優しく暖かい母。他の子供にはいる父もなく、他の人には見えないものを見て悔しかったこともあった。それでも健気にやってこれたのはすべて母のおかげだ。母はいつもこのように自分を見て暖かく笑ってくれた。世の中で誰よりも私を愛してくれる母がいたから一人ではないから、ウンタクは母の願い通りに明るく育っていた。
母がいてくれたから。
 「何?お願い事しなくちゃ。誕生日おめでとう。チビちゃん」
二つの手を合わせてもウンタクは願い事をすることができなかった。蝋燭も消すことができなかった。女性の笑みが消えた。ウンタガ、呼ぶ声も小さくなった。
 「・・・違うんだ」
ウンタクの目に涙があふれてきた。唇の形がゆがんだ。泣き声が聞こえてきた。
 「本当に母さんじゃないのね。母さん、魂なんだ・・・」
 「あんた本当に全部見えるのね。母さんはわからないように望んだのに。母さんは・・・」
女性は結局悲しい表情になった。ウンタクの涙も堰を切ったように流れた。いつも赤いウンタクのほっぺたの上を涙が流れた。ウンタクが泣いていても女性は、ウンタクの母は子供の涙を拭いてやることができなかった。
 「母さん、死んだの?」
 「・・・」
 「本当なの?」
女性は言葉を発することもできずゆっくりとうなずいた。
 「母さん、どこにいるの?母さん今どこにいるの?」
 「サゴリ病院」
しっかりしていて一人物心がついたウンタクだったが、9才だった。結局声を出して泣き始めた。涙も鼻水も流しおんおん泣き始めた。母さん、母さんと呼ぶ声に蝋燭の炎が揺れた。女性は少しでも子供を長く目に留めておきたいと、とめどもなく願ってみた。この小さな子供を置いて行かなければならないなんて信じられなかった。死はいつものように突然だった。一度経験してみてもそうだった。二度目も死は突然やってきた。しかし神を再び呼ぶこともできなかった。奇跡は1度で十分だった。
 「ウンタガ~母さんの話をよく聞いて。病院から連絡がくるから。行けば叔母さんもすぐ到着するだろうし。夜は寒いから、マフラーをして出て、これからは霊魂たちと目を合わせないで。わかった?」
娘が目に焼き付いて離れられないと思ったが、女性の霊魂は少しずつ消えていった。
 「ごめんね。母さん。そんなの見えて。でもわたしがそんなのを見えるから母さんにも会えたんだもの。わたし大丈夫」
 「そうね。こんな風に母さんを見てくれてありがとう」
二人が泣きながら最後の挨拶を交わした。こんな風に挨拶ができるから霊魂たちが見えるのも悪くないと思うウンタクだった。本当に。
 「母さんもう行かなくちゃ・・愛してるよ、チビちゃん」
 「わたしも。わたしも愛してる。母さん、母さん、元気でね。」
見ることはできても消えていく母に触れることができないウンタクは余計に悲しくなった。
 「母さん、天国に行ってね」
ウンタクの挨拶を聞いたのか、女性が最後までうなずいていた。すでにウンタクの前には誰もいなかった。最初から誰もいなかったかのように。ウンタクは母さん、と言って床につっぷして泣いた。ひとしきり泣く間に電話のベルが鳴った。 
母の言葉の通り電話はサゴリ病院からかかってきた。
 「チ・ヨニさんのお宅ですか?」
母さんの名前。ウンタクはまた受話器を掴んで泣いた。ずっと泣きながらも母が言った言葉を思い浮かべた。赤いマフラーを首に巻いた。出ようとして、依然として蝋燭がささっているケーキを見た。蝋がたくさん溶けてケーキの上に落ちていた。すぐ火も消えるだろう。
 「お願い事なんてしないわ。ひとつもしない。誰も聞いてくれないのに、誰に祈るの」
唇をぎゅっと結び、後ろ手でドアを強く締めた。ドアが閉まると小さくなっていた蝋燭の炎がふっと消えた。
敷石に置いておいた靴を履きながら、ウンタクは手の甲で涙をゴシゴシと拭いた。吹き寄せる海風がとても冷たかった。靴を履き終えて玄関を出て行こうとすると全身黒づくめの男が門の中に入ってきた。
 「おじさん誰?」
 「おまえ、俺が見えるのか?」 
母さんが霊魂たちと絶対に目を合わせてはいけないと言ってたのに。ひとしきり泣いたのですっかり忘れていた。驚いた顔になったのはウンタクだけではなかった。死神も驚いた。生きた人が黒い帽子を目深に被った自分を見ていた。
 「あ、マフラー。マフラーしてなかった」
 「してるんだけど。マフラー」
とぼけて見せたが、死神がおいそれと見逃すはずもなかった。反射的にマフラーに手を当てたウンタクは目をぎゅっと閉じた。大変だ。
 「ここがチ・ヨニさんのお宅かな?病院におられずに来たんだけど」
独り言のようにぶつぶつと言った死神が子供をじっと見た。生まれることができない子供だった。27歳チ・ヨニ、名前の下にあった無名を思いだした。あの時あの無名がここで育っていたことを死神は悟った。
 「もしかして今年9才になった?」
どうしよう。ウンタクの頭の中が真っ白になった時、門の中に老婆一人がつかつかと入ってきた。野菜売りのお婆さんだった。
 「お婆さん!」
ウンタクが老婆の後ろに走って隠れた。老婆は普通の老婆ではなかった。命を授けてやることが彼女の仕事だった。そして自分が愛情を持って授けた子供たちのそばを守り人間の世の中を飛び回る三神だった。ウンタクの母も、ウンタクも三神がとても大切に思う人間たちだった。愛らしい人間たち。
自分を見る子供にくわえ三神まで登場すると死神はさらに驚くしかないようだった。
 「行け!この子は置いて」
 「これは業務妨害ですよ」
死神の不満の声に、いつのことを今しようとするのかと三神は却って死神を非難した。
 「それはあんたの事情であって。この子が名簿にあるのかい? あの時この子は無名だったが今は名前がある。」
 「名簿に協力いただくためには、9年分の証拠すべてを上げなければなりません。ご存じの方に・・・
また会おう。おチビさん」
恐ろしい老婆の一喝に死神はまずは退くことにした。ただしなければならない事をしようとしただけなのに、三神の咎めに憤懣やるかたなかった。眉を下げた死神は、その仕事をするには大人しい印象だった。どっちにしろ今は時間も足りなかった。まずは名簿に書かれた者から探さねばならなかった。死神は気まずい目で首だけ出したウンタクに挨拶し、暗闇の中に帰っていった。
死神が門から出て行くやいなやウンタクは老婆の襟にしがみついた。再び母の事を思い涙が溢れてきたウンタクだった。
 「母さんが、母さんが」
言葉を続けることができないウンタクを老婆が慰めた。
 「分かってる。それはどうすることもできない。お前は生きて。すぐに引っ越しなさい。3日以内に行かなければならない。そうすればお前を探すことはできない。死神と目を合わせたらここで暮らすのはだめだ」
 「引っ越ししたら見つからない?」
 「見つからない。だから敷地が重要なんだよ。今日午前零時が過ぎたら葬儀場に男一人と女二人がやってくる。彼らについて行きなさい。苦労するかもしれないが、お前には他に選択はないよ。」
老婆の姿をした三神がウンタクに手に持っていた白菜を渡した。面喰いながら白菜を受け取ったウンタクがぎゅっと唇を噛んでうなずいた。
老婆は不思議な話をたくさんしてくれたりもした。母はお婆さんがしてくれた話しのおかげで助かったとウンタクはまだ知ることのない話を聞かせてくれた。
うなずくウンタクの目が泣いてそうなのかさらにキラキラと輝いていた。老婆は一度子供の頭をなでてやった。かわいい子供だった。すべての子供が大切だが、この子を授けた時は特別に幸せだったと思う。これからは苦労することだけが残されて気の毒に思ったが、致し方なかった。

(つづく)

● COMMENT ●

ようやくゆっくりと2話を拝見することができました。
シーンごとに記憶していますが、SAMTAさんの訳を読んだら、より理解が深まります。
三神は韓国固有の出産妊娠の神様なのですね~~~
あとに高校の先生に「アガ」と言ったときに、すごく違和感ありましたが、そういうことだったのね…と思いました。
子供のユ・ドックァとの会話も、すごく微笑ましかったです。

トッケビは生と死、罪と罰など本当に深いテーマをさらっと楽しいドラマにして見せてくれたと今更感じています。

このみさん

お返事遅くなりました。
トッケビはテーマも深くてセリフ回しも巧みで
ドラマを見ていても面白かったですが
本もとても面白く読んでいます。
それに引き替え、訳がへなちょこで申し訳ないです・・・^_^;

三神・・・韓国特有の伝説の神様など多彩なキャラクターが
出てくるのでよく知らないと最初は理解が難しいかもしれませんね。
そういう意味では小説は解説がついているので
ガイドブックとして読むといいかもしれません。


管理者にだけ表示を許可する

ワーナー・コリアの3作品目V.I.P «  | BLOG TOP |  » ミョンミンさん大望の映画情報2作品♪♪

어서 오세요

V,I,P, 2017 8月24日大公開!

キム・ミョンミンさんへのファンレター宛先

☆ファンレターはこちらへ☆

KMM with Heart200

(우)135-889 서울특별시 강남구
도산대로17길 19
(신사동 543-11) 온암빌딩 302호
MM ENTERTAINMENT 김명민님
ソウル市江南区島山大路17通19
(新沙洞543-11)温岩ビル302号
MMエンターテインメント
キム・ミョンミン様

プロフィール

SAMTA

Author:SAMTA
横浜在住
韓国ドラマ・映画好き
韓国俳優キム・ミョンミンさんの
カンマエに嵌ったのが2009年5月。
それからミョンミン道一筋です☆
韓国語、韓国料理など韓国文化全般に
興味があります。☆

カレンダー

08 | 2017/09 | 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

最新記事

最新コメント

リンク

このブログをリンクに追加する

カテゴリ

はじめてのご挨拶 (1)
김명민 キム・ミョンミン (275)
インタビュー翻訳 (5)
朝鮮名探偵3 (5)
물괴 物の怪 (3)
V.I.P (60)
하루;一日 A Day (41)
특별수사: 사형수의 편지;特別捜査:死刑囚の手紙 (72)
판도라;パンドラ (29)
조선명탐정2;朝鮮名探偵~消えた日雇いの娘~ (58)
히말라야ヒマラヤ (10)
간첩 カンチョップ(スパイ) (53)
연가시:ヨンガシ (86)
페이스메이커:ペースメーカー (116)
명탐정;朝鮮名探偵トリカブトの秘密 (84)
파괴사破壊された男 (77)
내사곁 私の愛 私のそばに (37)
소름 鳥肌 (6)
육룡이 나르샤 ;六龍が飛び立つ (337)
六龍が飛ぶ 人物紹介 (4)
六龍が飛ぶ 単語復習 (10)
六龍が飛ぶ あらすじ (44)
六龍が飛ぶ 鄭道傳の生涯wiki翻訳 (5)
개과천선:改過遷善 (184)
드라마의 제왕; ドラマの帝王 (172)
「ドラマの帝王」日本語字幕を楽しむ (18)
베바 ベートーベン・ウィルス (37)
거탑白い巨塔 (11)
불량가족不良家族 (13)
불멸不滅の李舜臣 (61)
꽃보다花よりも美しく (4)
ファンミ☆モイム (61)
「赤い糸伝説」청실 홍실 (51)
韓国料理☆한국 음식 (4)
韓国をたどる旅 (49)
韓国語 (14)
韓国映画・ドラマ (33)
ウリケースケ (6)
日常 (40)
その他 (62)
未分類 (0)
コツコツ翻訳 (25)

アーカイブでクラウド

もうひとつのつぶやき

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

FC2カウンター